最上義光歴史館

最上義光歴史館
ログイン
メモ メール アンケート カレンダー ブックマーク マップ キーワード スペシャル プロジェクト
 博物館に限らず、施設管理の基本に「草取り」というのがあります。山形の場合これに「雪掃き」が加わります。実際はそんな風物詩のようなことではなく、機材による「除草」とか「除雪」といった作業になるのですが、当館は良くも悪くも零細博物館で、また、公園敷地の中にあるため、草取りを要する場所はほとんどありません。しかし、当館裏の一般立ち入り禁止の公園敷地には、野草が伸び放題になっています。


敷地裏側の伸び放題の野草近影

 中でも勢いがあるのが、洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)というアメリカヤマゴボウとも言われる山牛蒡の仲間です。その実は紫色の染料にもなり、手や服につくとなかなか色が取れず、アメリカではインクベリー(Inkberry)とも言われ、日本でもインクの木などと呼ばれることもあります。実はたっぷりとなり、ヤマブドウの一種と勘違いされることもあります。ヤマゴボウなのにヤマブドウのような実がなるというわけのわからない植物です。


ヨウシュヤマゴボウの実

 ただ、この洋種山牛蒡には、根も葉も実も全てに毒があり、最悪の場合は死に至るといいます。しかしその実は、いかにも食べられそうに見えるため、これを幼児などは口にする危険性があります。一方、鳥には毒性がないのか、実をよくついばみ、その分、種を運ぶようで、洋種山牛蒡は付近のあちこちに繁殖します。気づくと一か月ぐらいでかなり大きく育ち、その根は時にサツマイモのような大きさになります。
 厚生労働省のHPには「自然毒のリスクプロファイル」というリストがあり、それによると、食べると腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして死亡、発病時期は2時間とあります。皮膚に対しても刺激作用があるとのこと。にもかかわらず、実のついたものを花屋でみかけることがあります。生け花に使うようです。なお、味噌漬けなどにされる山菜の「山ごぼう」は、このヤマゴボウとは全く異なるキク科に属するモリアザミなのだそうです。
 意外だったのが、同じリストにアジサイ(紫陽花)があることです。アジサイなんか食べないだろう、とは思うのですが、料理の下敷きに使われたものを食べて中毒症状を起こしたりするそうです。厚生労働省のHPにも、料理に添えられていたアジサイの葉を食べた 10 人のうち 8 人が、食後 30 分から吐き気・めまいなどの症状を訴えた例や、居酒屋のだし巻き卵の下に敷かれていたアジサイの葉を食べ、40 分後に嘔吐や顔面紅潮などの中毒症状を起こした例が掲載されています。いずれも重篤には至らず、3日程度で回復したそうです。中国では、アジサイそのものが八仙花(はちせんか)と呼ばれる生薬となっており、抗マラリア剤とされるが、やはり嘔吐性が強いので頻用はされないそうです。アジサイは毒にも薬にもなるようです。
 一方、このリストにはないのですが、毒性をもつことで有名なのがキョウチクトウ(夾竹桃)です。その名のとおり、葉の形が竹の葉に似ており桃色の花を咲かせます。この花はバラに劣らず美しく背丈もあり庭木にもってこいの植物で、かつては玄関口など身近な場所に鉢植えや地植えなどで植えられていたのですが、その毒性が知られるようになり注意を促す自治体もでてきました。


キョウチクトウの花と葉

 夾竹桃は、花、葉、枝、茎、全ての部分に、青酸カリよりも毒性が強いと云われる有毒物質を含んでいるそうです。下痢や心臓麻痺などを引き起こし、成人では、キョウチクトウの葉5〜15枚で致死量に達するといわれています。実際に小さな子供が夾竹桃に触れてしまい、夾竹桃中毒になって亡くなってしまった例があるそうです。ペットや剪定の時なども夾竹桃に触れないよう注意が必要です。また、夾竹桃の枝や葉を燃やすことで有毒ガスが発生し、吸引すれば下痢や嘔吐といった症状がでます。これも死に至ることがあるそうです。
 フランスでは普仏戦争の時、野外でバーベキューをしたところ串が不足したので、夾竹桃の生枝を串にして肉を焼いて食べ、11人中7人が死亡したとか、日本でも西南戦争の時、官軍の兵隊が夾竹桃の箸で弁当を食べ中毒者を出したということがあったそうです。山形名物の芋煮の季節もそろそろです。夾竹桃を串にしたり箸にしたりされないよう気を付けましょう。


( → 裏館長日誌へ続く)
 現在、当館では企画展示「収蔵名品展 −武人と屏風−」を開催中で、3点の屏風を展示しています(令和6年9月29日(日)まで)。収蔵資料から武人とかかわりのある名作屏風を展示し、武人が屏風を通して見ていた風景を供するものです。
 それぞれの屏風を簡単に紹介しますと、まず「四季花鳥図屏風」は、六曲一双の山形県指定有形文化財です。「四季花鳥図屏風」と言えば、狩野派ファンの方は、あっ、あの狩野元信の平成25年の切手趣味週間にも採用されたあれか、と色めきたたれるかもしれませんが、そうです、あの狩野元信の屏風、ではなく、彼の晩年の弟子、狩野玄也が描いた、金極彩色の「四季花鳥図屏風」とは真逆の、しぶい墨画淡彩です。
 背景には霞のようにうっすらと金泥が塗られているものの、あちこちに傷みがあります。しかし、博物館的な価値としては出所や来歴に依るところが大きく、この屏風は山形城主だった秋元家に伝来したものであり、作者も来歴も由所あるものです。逆にたとえ美品であっても、出所や来歴が不明だと展示は困難になります。


「四季花鳥図屏風」右隻

 つぎに「葡萄棚図屏風」という六曲一隻の屏風を。最上義光の菩提寺である光禅寺に伝来した屏風で、本来、六曲一双の屏風なのですが、火事に遭い、半分の一隻だけが残ったものです。葡萄棚にフサフサと実る葡萄が描かれているのですが、これは「葡萄」に「武道」を掛けた武人に好まれる図柄でもあるということで、なんともベタベタな駄洒落ではありますが、西洋では、葡萄は多産繁栄の象徴として好まれたモチーフではあります。
 それで焼けてなくなったもう一方の屏風はどんな図柄なのか。当館に協力いただいている大学の先生から以前、ケルン市立東洋美術館で同じような屏風を見たことがある、との情報をいただいており、今回の展示にあたり、その収蔵品リストにネットで確認したところ、ほぼ同じ図柄の屏風がありました。これにより当館に残った屏風が、右隻なのか左隻なのかも推測できました。
 また、そこには作品解説もあり、ネットによる自動翻訳文では「構図的には、屏風は加納永徳の〈拡大されたモチーフの公式〉に従っており、金箔の広い表面に対してセットされ、浅い絵画空間を作り出しています。」とありました。なんとも直訳風ではありますが、まず、「加納永徳」ですが、なぜか「永徳」は変換できても、「狩野」ではなく「加納」となってしまい、まあこれは自動翻訳ではしばしば起きることです。「拡大されたモチーフの公式」とは「大画様式」のこと、「浅い絵画空間」とは「奥行きのない絵画空間」と読みかえると、ようやくこの文章がわかりやすくなるかと。まずは、このドイツでの研究成果をもってすれば、この屏風の作家や年代がなんとなくわかり、この葡萄棚図屏風は狩野永徳の工房でつくられたとの見方に、もしかしてたどりつけるかも。なにはともあれ、ここの美術館のデーターベースはしっかりしていて、出品記録や出版物掲載記録まで記録公開されていて、とても有用なものです。


「葡萄棚図屏風」

 最後は、紙本金地著色の「すすき図屏風」。これは金地に様式化された糸薄(いとすすき)だけをただただ描いているもので、尾形光琳の「燕子花図屏風」を想起させる、狩野派よりも琳派といった趣向の図柄です。見事なほどシンプルモダンな図柄で、色彩的にもデザイン的にもミニマルなものです。そのグラフィカルに描かれた薄が、屏風が折れることで、重層的で立体的な奥行きを作り出し、この六曲一双の大画面で室内を飾れば、そこはたちまち異空間と相成ります。
 個人的には大変気に入っている屏風なのですが、如何せん、「義光の重臣の菩提寺に伝来したもの」という情報のみで、年代も作者も不詳のため、博物館的には扱いが難しいものです。「葡萄棚図」のように、類似作品が他にあればとは思うのですが、薄(すすき)をモチーフにした屏風はあっても、これと同じ画風のものはなく、見方を変えれば唯一無比の屏風なのですが、多くの屏風がパターン化されて描かれていた中で、この「すすき図屏風」は、「他に類を見ない唯一無比の貴重な屏風である。」と言い切るのも、それはそれで気合のいることでして。でも、いい図柄でしょう、これ。


「すすき図屏風」右隻


(→ 館長裏日誌に続く)




開館時間 9:00から17:00まで
※入館受付は16:30まで
※100名城スタンプを希望される方は16:30までご入館ください。
開館時間 9:00から18:00まで
※入館受付は17:30まで
※100名城スタンプを希望される方は17:30までご入館ください。